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代表理事からメンバーの皆さんへ    2019年

ごあいさつ(協同組合について)

西尾敦史 

 わけあって非営利組織(NPO)のことを調べていたら、歴史的に協同組合が大きな役割を果たしてきたことが分かってきました。

 世界で最初の協同組合は、1844年、イギリスの工業都市マンチェスターの北東にあるロッチデールという小さな町で、織物工など28人の労働者が、自らの手でより良い社会を生み出そうと「ロッチデール公正開拓者組合」を設立したことに始まります。19世紀のイギリスには、世界に先駆けて産業革命が起こり、生産が飛躍的に増大しました。その一方で、工場で働く人々は低賃金・長時間労働を強いられ、常に失業の不安にさらされていました。

 時を同じくして(1844年)、ロンドンでYMCAが誕生しています。やはり産業革命時代の劣悪な労働環境、社会不安が背景にありました。当時のイギリスは悪名高き改正救貧法の時代。貧しい人々はワークハウスで働かされたり、ますます困窮していくような厳しい時代でした。

 協同組合は、その後フランスやドイツ、ヨーロッパ、アメリカなど、世界各地に広がっていきます。もちろん日本にも。1921年に賀川豊彦が中心になって設立した神戸購買組合と灘購買組合は、現在のコープこうべ。日本最大の協同組合です。

 最近の協同組合の展開で興味深いのは、イタリア。

 イタリアでは、1970年代に精神障がい者の退院促進が進み、2000年にはバザーリア法により全土で精神病院が全廃されることになります。退院し地域に出た精神障がい者の就労活動が始まるのですが、病院跡地に作業場を設営し、自ら雇用の場を作り、ソーシャル・コーポラティブ(社会的協同組合)が展開されました。1991年には社会的協同組合法が制定されます。この社会的協同組合にはA型とB型があり、A型が社会福祉サービス提供、B型が障がい者と支援者が共に働く労働統合型社会的企業に分けられました。病院退院後の協同組合の実話を描いた、イタリア映画「人生ここにあり」は、実話を元に病院から地域に出て、木工などで働き始める患者たちと病院職員の取り組みがユーモア豊かに描かれています。

 もっとも最近のトピックは、2016年、ユネスコが「協同組合において共通の利益を形にするという思想と実践」を無形文化遺産に登録することを決定したことです。決定にあたってユネスコは、協同組合を「共通の利益と価値を通じてコミュニティづくりを行うことができる組織であり、雇用の創出や高齢者支援から都市の活性化や再生可能エネルギープロジェクトまで、さまざまな社会的な問題への創意工夫あふれる解決策を編み出している」と評価しています。

 私たちも特定非営利活動(NPO)法人。小さな非営利団体のひとつとして、共通の利益と価値を通じて舞岡の地でコミュニティづくりを行っていきたいですね。